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田中和人 個展『Picture(s) II』

開催記念トークイベント
「写真的芸術家をめぐって—田中和人の作品から考える—」

田中和人 × 梅津元

日 時: 2025年7月12日(土)

会 場: KANA KAWANISHI GALLERY

登壇者: 田中和人 × 梅津元

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『Picture(s)』『Picture(s) II』について

〈『Picture(s)』『Picture(s) II』について〉

河西:    それではお時間になりました。田中和人さんの個展『Picture(s) II』を記念して、「写真的芸術家をめぐって —田中和人の作品から考える—」というタイトルでトークイベントを始めたいと思います。まずは田中さんに作品についてお話しいただき、その後、梅津さんに「写真的芸術家」という言葉について説明していただきながら進めていきます。

田中:    こんにちは、田中和人です。今日は暑い中お越しいただきありがとうございます。初めて僕の作品をご覧になる方も多いと思いますので、まずは今回展示している新作についてお話しし、その後これまでの代表的なシリーズをいくつか紹介したいと思います。あまり一方的にならないように、梅津さんにも適宜コメントをいただきながら進めていければと思います。

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『Picture(s) II』展示風景
2 Kazuhito Tanaka, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY

今回の個展は新作で構成されています。展覧会タイトルは『Picture(s) II』ですが、もともと〈Picture(s)〉というシリーズ*1があります。小ぶりの作品が〈Picture(s)〉で、左側の壁に展示しているものがそうです。対して〈Picture(s) II〉(上記画像中央・右)は、より大きめの作品で、ドローイングのような要素も含んでいます。

〈Picture(s)〉を始めたのは2021年で、これまでに120点ほど制作してきました。技法を簡単に説明すると、まずキャンバスに絵を描き、その上に暗室で発色させたカラー印画紙(写真)をコラージュのように重ねます。インクジェットではなく銀塩カラー印刷による写真です。絵画と写真が緩やかに対応するように構成されています。

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《Picture(s) #22》
2022 | Acrylic and analog chromogenic print on canvas (with acrylic frame)|343 × 253 × 68 mm

© Kazuhito Tanaka, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY

梅津:    印画紙の色のコントロールは、どのくらい自由にできるものなんでしょうか?

田中:    基本的には無限にできます。露光する光の色と時間によっていくらでも違う色が出せます。大量に暗室で色を作りストックしておき、後で絵画に合わせて必要な色を選びます。

 

梅津:    絵画における絵具のチューブを揃えておくのと同じですね。

田中:    そうです。暗室作業は「材料づくり」に近い感覚です。

〈シリーズの連鎖と転換点〉

〈シリーズの連鎖と転換点〉

田中:    これまで2008年から15ほどのシリーズを作ってきました。大きな軸となるシリーズと、それを補完する試作的なシリーズがあります。最初期は〈blocks〉*2。スナップ写真の風景を積み木で再現し、それをピントをずらして撮影した作品です。次に重要なのが〈GOLD SEES BLUE〉*3。金箔をフィルターに森を撮影しましたが、結果は青い光しか通らなかった。その偶然からシリーズが立ち上がりました。

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《blocks #16》
2010 | Digital chromogenic print | 220 × 286 mm

© Kazuhito Tanaka, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY

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《GOLD SEES BLUE #1》
2009 | Digital chromogenic print|600 × 900 mm

© Kazuhito Tanaka, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY

梅津:    ちなみに私は『blocks』と『GOLD SEES BLUE』もとても好きなんです。2012年の個展からずっと拝見しています。それで10年くらい前の2015年くらいに作品集の原稿を頼まれまして、その時に過去の作品のチャートみたいなものを見せていただいたことがありましたよね。

田中:    そうでしたね。それがもう10年前なので。僕の作品は常に連鎖的に展開しています。前作の課題や発見を次につなげていく形です。ゼロから突然新しいシリーズが生まれることはなく、必ず連鎖しています。

田中:    大きな転換点になったのは『pLastic_fLowers』*4です。花瓶の前に透明な板を立て、自分で線を描き、その線にピントを合わせて花と一緒に撮影しました。これで初めて絵画的な行為を導入しました。そこから『PP』が生まれ、絵画の上に写真を貼る試みをしました。ただ、これは絵画に寄りすぎていると感じました。そこで絵画と写真を平面的に分けて並置する『Picture(s)』を始め、さらに2024年からは『Picture(s) II』を制作しています。

 

河西:    これまでの発表を振り返ると、多くは写真作品として展開されてきましたよね。一方で『Picture(s)』以降は絵画的要素を積極的に取り込み、作品の姿も変化しているように思います。そうした中で、田中さんご自身は「写真家としてのアイデンティティ」をどのように考えているのでしょうか。そして、作品の根底にある「写真的思考」というものに、田中さんはすごく重きを置いているようにも感じますが、それをどのように捉えていらっしゃいますか。あるいは「アーティスト」という呼び方の方がしっくりくるのか。そのあたりを少し詳しくお聞かせいただけますか。

田中:    自分ではアーティストだと思っています。絵画への関心は強いですが、「描きたい」というより「見る」という行為そのものに惹かれているのです。特に抽象絵画を「見る」ことが、自分に強烈に作用している。そのことを解き明かしたいから、写真というメディウムを通して作品を作り続けているんです。そのことを写真を通して考えたい。だから画家ではなく、写真を基盤に思考しているアーティストです。

河西:    それともう一つ。2018年に田中さんが主催した「画家の写真展」*5という展覧会が企画されましたよね。7人の画家を集めて、3日間だけ行われた特別な展示でした。そのときのカタログに寄稿された梅津さんが、田中さんのことを「写真的芸術家」と書かれていました。田中さんもその言葉の意味をもっと知りたいと仰っていましたので、今日はぜひその背景を梅津さんから詳しくお話しいただきたいと思います。

梅津:    私が田中さんの作品を初めて見たのは2012年です。最終的なアウトプットは写真でしたが、その背後には絵画への強い関心がはっきりと感じられました。その後もお話を重ねる中で、クリフォード・スティルやマーク・ロスコといった抽象表現主義への言及が度々出てきて、作品と絵画の系譜との関係が見えてきました。

さらに2016-2017年に私が武蔵野美術大学が運営するギャラリーαMでゲストキュレーターを務めた際に、田中さんに出品いただきました。2012年に東京で初めての個展を拝見して以来、展示の機会に、その都度田中さんとお話をしてきました。

田中:    はい、展示を全て見ていただいていると思います。

梅津:    ただ、正直に言うと当時は『pLastic_fLowers』はよく分かっていませんでした。でもその後、2年ほど前に京都で個展を拝見したときに、「『pLastic_fLowers』はこんなにすごい作品なのか」とようやく認識するに至ったんです。

そして今回、写真的芸術家について話すというありがたい依頼をいただいたんですけど、やってみたら大変な話でした。それだけで大きなテーマなんです(笑)。

河西:    すみません(笑)。

『pLastic_fLowers』と絵画的行為

〈『pLastic_fLowers』と絵画的行為〉

  

脚注
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