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街の点滴

 

街の点滴

電柱は、戦後の復興の時にお金がなくて立て始めたんですよね?
 

河西: 

そう言われていますね。電柱を立てて電線を走らせるのは安いそうです。始めは仮置きで立てた電柱ですが、どんどん電力が必要になり、次々と電柱を立てていき、仮置きではなくなった結果が今の街です。
 

牧野: 

展覧会を見せてもらいましたけど、牧野さんは電線が多いところを敢えて選んで撮っているわけではないですよね。割とスカッとしたところや、幾何学的なところもあるなと思いました。僕なんかは、面白くてぐちゃぐちゃなところを撮ってしまうけど、牧野さんはどういった基準で撮影されているんですか?
 

都築: 

電線と街との関係性が面白いなと思った時でしょうか。あとは、ぐちゃぐちゃな所って、ただぐちゃぐちゃなだけで飽きてくるんですよね。撮影していると、街と電線が織りなすストーリーを探し始めるんです。例えば、この新興住宅地だと、点滴を受けているように見えるなと思って撮影しました。
 

牧野: 

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Shinozakimachi 35° 42' 5.532" N 139° 54' 21.72" E
2021 | archival pigment print | 460 × 690 mm | ©︎ Tomoaki Makino, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY

なるほどね。僕がぐちゃぐちゃな電線がある街が好きなのは、ものすごく混み入った電線が街の血管みたいに見えるからなんですよ。ここから電気という名の血液が流れているというね。だから、ぐちゃぐちゃな電線が這う街には、すごく生命力を感じるわけ。でも今見た新興住宅地は、まさに点滴というか、生命力ないでしょ。生きる活力に欠けたように見えるっていう。勝手な想像ですよ(笑)。だけど今牧野さんがおっしゃったように、電線と風景との関連と一緒ですね。
 

都築: 

20210625_046.jpeg

Ikegami 35° 34' 33.24" N 139° 42' 22.302" E
2021 | archival pigment print | 460 × 690 mm | ©︎ Tomoaki Makino, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY

これも面白いですよね。
 

河西: 

池上本門寺あたりですが、神社の前に立てるんだと思って撮りました。この場所にこれは要らなくない?と思いましたね(笑)。
 

牧野: 

今後の構想

今後の構想

 

都築さん鋭いご指摘をありがとうございました。電柱がおばちゃんと同じという視点がとても面白いですね。牧野さんは今後の構想などありますか?
 

河西: 

まだ構想ですけど、植物に犯されている家シリーズはどうかなと思っています。電線を撮影しているときに、数キロに1軒くらい、すごい状態になっている家があったんです。それはまだメモ程度でしか撮っていないですが、そればかりを集めたらすごく面白くなるんじゃないかと思っています(笑)。
 

牧野: 

それはもう、おばちゃんを通り越して、婆さんになってますね。アウトサイダー的なね(笑)。
 

都築: 

もう一つあって、路上生活者の方が生活雑貨一式をカートにまとめてますよね。そのカートが面白いなと思っていて、そのカートを車として撮るというシリーズです。あのカートに全てが入っているので、キャンピングカーとして撮ってみたいなと。まだ始めてはないですけどやってみたいと考えています。やろうと思ったらすぐできますけどね、お酒持って撮影に行ったらね(笑)。
 

牧野: 

ホームレスも都会じゃないと成立しないものじゃない?田舎じゃホームレスはいないからね。だから都会に支えられて生きている生き物ですよね。純粋な風景写真ではない、街との関わりみたいなところが、牧野さんの興味が向いていくのところなのかも知れないですね。
 

都築: 

言われてみると確かにそうかも知れません。
 

牧野: 

だってさ、ただの大自然なんて興味ないでしょ?
 

都築: 

全然興味ないです(笑)。
 

牧野: 

そうでしょ。僕も撮ったことないもん。やっぱり誰か住んでないとつまらないんですよね。
 

都築: 

色々と構想があったんですね。
 

河西: 

前からふんわりと考えてはいます。
 

牧野: 

_U1A4856.jpg

個展『まちをたぐる』展示風景
©︎ Tomoaki Makino, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY

牧野さんから、面白そうなことは大体すべて都築さんがやり尽くしてると良く伺っていたんです(笑)。
 

河西: 

でもさ、ふんわり思っている時に始めないとダメですよ。最初からコンセプトを作っちゃうと、その瞬間に面白くなくなるんだよ。よく分からないけど気になって10回くらい撮って飽きちゃうものもあれば、気がついたら撮り始めて5年くらい経っているものもあるわけじゃない。沢山やっていくうちに見えてくるものが自然だと思うんですよね。

写真学校や美術学校などのアート教育で、すごく良くないなって思うのが、まず先生がコンセプトを立たせることだよね。現代美術なんて、もろそれじゃない?最初からきちっと考えを言えるような奴は、アーティストになる必要がないわけよ。大体が、口下手だったり、頭が悪かったり、人と向かって話せないような人で、それでも絵を描いている時だけは自分らしくいられたり、リストカットしないでいられる。そういう人は、描いているうちに何かができてくるんですよ。やっぱり最初から何かを決めてそれを作っていくというのは、すごく良くない専門教育の弊害だと思います。だから、美大とか専門学校とか絶対に行かない方がいいと思うんです。美大はものすごく高いアトリエ使用料だと思えばまだ良いですけど、写真学校は特に要らないですよね。牧野さんは行ったんですか?

 

都築: 

行きました(笑)。
 

牧野: 

何か意味ありました?何年行ったの?
 

都築: 

東京工芸大学の芸術学部に4年通いました。まあ、写真撮らせてもらえる時間を4年もらえたなという感じです。
 

牧野: 

今、特にデジカメの世界だから何も学ぶことなんてないじゃん。
 

都築: 

自分で学べば良いということですよね。
 

牧野: 

理系なら別ですよ。でも、ものを表現するのは違いますよね。例えば学校での評価は、先生から受けるでしょ?だから先生がわかることだけでしか評価を受けられないんですよ。昔の写真はもっとテクニカルなところがあったので、やはり修練が必要だったと思うんです。その点では楽器と同じだと思うんですよね。僕はギターが好きなんですけど、ギターも昔はアコースティックギターしかなかった時代が長くて、綺麗な和音を出すためにはある程度練習が必要だった。でも、エレキギターは押さえれば爆音が出るんです。今の時代に写真学校に2年なり4年なり通って「先生に分かってもらえる様な作風」を作っていくというのはデメリットしかないと思うね。牧野さんは4年間写真を撮る時間をもらえたっていうけど、4年スタートが遅れたってことよ、悪いけど(笑)。
 

都築: 

(笑)
 

一同: 

別に牧野さんのことを言っている訳ではないですよ(笑)。今学校に通っていて、違和感を感じている子の話を聞くことが多いからね。美大もとりあえず就職したくないからなんて言って通っている子も多いけど、本当にすごい奴は、美大なんて通わずにバイトしながら、飲み会なんて行かずにまっすぐ家帰って絵を描いているのよ。そういう奴に君は4年遅れたんだよ、といつも思うよ(笑)。これを聞いている人はどういう人が分からないですけど。
 

都築: 

デジカメ時代の写真作品

デジカメ時代の写真作品

 

写真は特にデジカメの時代になって、ものすごく民主的になったと思うんです。昔はいいカメラやレンズを持っていた奴が一応きれいな写真撮っていたけど、今はiPhoneで撮ろうが、ライカで撮ろうが、どうせスキャンするし一緒なんだよね。「モノクロは銀塩」という神話も完全に崩れた訳だしね。牧野さんもデジカメで撮って、敢えてモノクロに変換しているんでしょ?プリントはインクジェットですか?
 

都築: 

インクジェットです。
 

牧野: 

そうでしょ(笑)。今までフィルムで撮って、印画紙にプリントしていた牧野さんが、インクジェットでも良いと思えたということでしょ?
 

都築: 

そうですね。綺麗だなと思いました(笑)。
 

牧野: 

僕もプロですけど、こうやって額装されてアクリルとか入れたら銀塩プリントなのかインクジェットプリントなのか絶対にわからないです。100%分からないですよ。だから、銀塩の味わいだとか、印画紙の黒の深みだとか言っているのを聞くと腹が立つんだよね。こういったデジタルプリントになったらもはやエディションとか意味ないでしょ。
 

都築: 

まあ、データですもんね。
 

牧野: 

でしょ?今回のはエディションいくつかあるんですか?
 

都築: 

一応設定はしています。
 

牧野: 

本当であればその設定数に達したら、データ消さないとおかしいじゃない。でもそれはやらないでしょ絶対に。こういう場所だから言わせてもらいますけど、版画も一緒ですけど、特に写真におけるエディションはギャラリーの都合なんだよ。
 

都築: 

あ、はい!(笑)
 

河西: 

エディション5だと、5枚だから価値がつくんでしょ。僕は、自分の展覧会をやる時はなるべくエディション付けないようにしているんです。そうすると必ずギャラリー側がそれだと売れないからと怒るわけ。だから僕は、それでも売れるくらい安くしようって言うんだけど、それだとこちらの生活がと言われてしまうの。ギャラリーが悪いと言っているのではないですよ。だけど、そうやって数を限って良いものを作るということですよね。

昔の版画なんかそうだったと思うんです。沢山刷ると、版木が傷んでくるので枚数が限られていた。だけど、インクジェットプリントにはリミットはないわけよ(笑)。昔は有効だったそういうシステムが、デジタルになったことで崩れているんだけども、そういうのを扱う側もそうだし、買う側もそうだけど、まだそういった変化について行けていない時代にいるよね。だから、牧野さんもその転換期にこのお仕事を選んでしまったということですよね。

 

都築: 

そうですね。僕も最初は大学の時からフィルムでスタートしていますから、デジタルへの移行で思う事はありますね。
 

牧野: 

ある意味面白い時代だと思うわけです。それは写真だけではなくて、例えば音楽でもそうですよね。アナログレコードにしかない味が、と言う人もいますけど、そんなものないから。ノイズが入っているだけだから(笑)。クオリティとしては低いわけです。でもそれを「味」と言われるわけです。フィルムもそうですよ。絶対にデジカメのデータ量の方が多いでしょ。フィルムだと潰れてしまうところもデジカメだと出てくるわけだし、フィルムの限界を「味」だと思っているんだよ、みんな。それはそれで良いんですけど、分かって取り組まないと変な信仰が生まれるわけだよね。

今回の牧野さんの作品も、全ての作品にGPSを埋め込んでいるという話だけど、GPSを付けたことによって作品を作った後の世界が広がっていくと思うんだよね。例えば、色んな第三者の人が参加していくこともできるし、プリントして終わりではなく、また違う可能性が出てくると良いと思いました。GPSを付けて、ここで撮りましたという情報だけだとただの記録にしかならないでしょ。

 

都築: 

時間が経過したあと、その場所の変化が見えてきますよね。
 

牧野: 

だから例えばこの作品を公開することで、5年後にこの作品を見た人がその場所に行って電線がなくなっていたと気づいたら、誰か第三者がアップデートできるとかさ、色々とできてくると面白いですよね。
 

都築: 

なるほど。
 

牧野: 

すみません、勝手な感想ですけど。でもデジタルの時代になるってそういうことよ。プリントが完成ではなくなってきたんだよね。それを牧野さんの作品で次のステップに活かせられたら、見てみたいなと思います。
 

都築: 

電子書籍の可能性

電子書籍の可能性

 

ありがとうございます。私からお二人にお聞きしたいなと思っていた事がいくつかあるのですが、その内の1つを質問させていただきます。牧野さんは元々フィルムだったところからデジタルに移られていて、都築さんはずっと紙の雑誌を続けていたところからウェブに切り替えられていますよね。内実を知っているといい点ばかりかと思いますが、お二人はそこに郷愁など感じることはありますか?牧野さんについては、先ほど都築さんから解説いただいたので、都築さんにその辺りをお聞きしたいです。
 

河西: 

そうですね、僕ももう軸足はインターネットです。あとはメールマガジンが主な仕事なんですけど、他にも自分で電子書籍の写真集も出しているんです。昔出した写真集でぜんぜん再販されていないものや、僕以外の大きなコレクションの写真集など、そういうものを電子写真集として作っています。USBに入れて販売したり、ダウンロード版を作ったりしています。やはり写真が仕事ですから、10年前まではすごく格好いい写真集を作りたかったんですよね。なるべく大きくて、なるべく厚い、なるべく印刷の良いもの。でも、ある時からそういったことに全然興味がなくなったんです。
 

都築: 

いつからですか?
 

河西: 

10年とまではいかないけど、10年くらい前から。ここ数年は特にですね。雑誌もですが、本って金の勝負なんですよ。なるべく大きい方がよく見えるんです。僕の本も単行本や文庫本になっていますが、ディティールを見るといっても、文庫本だと意味がないんです。文庫本だと見えないものがいっぱいあるわけ。単行本でも、例えばA4サイズのものもあれば、TASCHENの1mサイズの写真集*5もある。いくら格好いいことを言っても、1mの本には敵わないわけですよ。でも、1mの写真集を50万円で買う人ってのは、もう僕の写真を届けたい人ではないわけ。良いものを求めれば求めるほど、見せたい人に見せられなくなる。

あとは、写真集はどうしてもページ数に限界があるんです。1000枚載せたいと思っても、100ページしかないと言われたらそれまでじゃないですか。だから、見せたいものが見せられないという思いが何十年もずっとありました。ようやく10年前くらいから電子出版の可能性が出てきて、本当はすぐにでも始めたかったんですけどそれが出来なかったんです。

電子出版は基本的に2種類で「Kindle」か「iBook」しかありません。Amazonが運営しているKindleは、とても手軽で良いですけどあれは基本的にテキストベースなので、データの大きさが限られるんです。だから写真を綺麗に出したいと思うとKindleは不向きなんです。そうすると、Appleが運営するiBookしかないんですが、Appleの重大な問題は、 Apple様の検閲があるということです。つまりエログロとかは一切ダメ。だから、秘宝館の方なんて絶対にできないし、ラブホだって危ないです。この歳になって、 Appleのご機嫌を伺うのなんて嫌なんです。

 

都築: 

(笑)
 

一同: 

あとは、構造的な問題としては、電子書籍になって「古本」という概念がなくなってしまったということです。例えば、牧野さんが電子書籍で熟女の写真集を出すとするでしょ?それで誰かが買って、すごく面白いからと言ってもそれを誰かに紹介することができないんです。紹介された側も買うしかないし、買ったものを誰かに譲ることもできない。本来であれば電子の世界はもっと開放的であるはずなのに、AmazonもAppleも自分の世界に囲い込もうとしているんですよ。Kindleで見たら、ずっと一生Kindleと付き合えとか、 Appleはずっと Appleの中にいろとか、その中ではすごく便利だよというシステムを作っている。でも「中古の本」がないということですよね。そこがすごく嫌だなと思って、じゃあこれは自分で作るしかないなと思ったんです。

これから牧野さんも電子写真集を出すかもしれないのでお話ししますが、例えばKindleやiBookのフォーマットを使うということは、そのフォーマットを制作している会社にお金を払い、その代わりに「プロテクト」を貰うということです。要するに、勝手にコピーができないようにしてくれるんです。でも、僕はコピープロテクトを掛けたくないんです。まず、自分の写真は情報だと思っているので、なるべくみんなに広まって欲しいんです。そういう点が1つと、あとはそうやってどんどん金額が高くなっていくのが嫌なんです。今、印刷の本と、電子書籍の本と、金額がほとんど変わらないですよね。でもおかしいですよね、紙も使っていない、印刷もしていない、なのになぜ金額が変わらないのかと思いますよね。それは本屋さんを圧迫しないためにそうしているわけですけど。だから、そう言ったことを一切使わないで、誰でも何のアプリも使わないでも見れる方法を考えたんです。それは2種類あって、「JPEG」か、「PDF」です。その2つだったらスマホでもパソコンでも何でもクリックすれば見れるんです。

そこで、最初は「JPEG Books」というものを作ろうとしたんですが、テキストが多いと無理があるので、PDFで作りました。PDFだと例えば、高解像度の画像を1冊の中に1000枚、1500枚と入れられちゃうんです。それでも2ギガ程度だから、ぜんぜんUSB1本で足りるんです。そうやって例えば『TOKYO STYLE』を作りました。そうすると、紙の写真集だと入れられなかったボツの写真まで全部入れられるんです。そして、PDFの何が良いかと言うと、見たいところを拡大できるんです。そうすることによって、どんどん中に入っていけるんです。例えば汚い部屋があって、拡大していくと、ぐちゃぐちゃの本棚があって、そこにある本の背が見えるんです。それはつまり、今まで本にあった「金の力」を無にしたと言うことです。高いお金を払って、巨大な本を買わなくても、スマホで見たいところを拡大したら同じですからね。今までは、デカい本を作れたやつが偉かったわけよ。でも僕はそれをチャラにしたかった。そのためには、高解像度の自分の写真を広めるのが1番良いなと思ってPDF写真集を始めたんです。だから、すごく転換期だなと思います。

コミケなんかでは、もうすでに手焼きのCD- ROM写真集やDVDなんかは沢山出ているのよ。でも、Art Book Fairがありますよね。僕もブースを持って参加していますし、トークも何度も出ていますし、トークの度に電子書籍や電子写真集の可能性について話していますけど、いまだに電子写真集を出しているのは僕のブースだけだからね。あとは可愛い本から豪華写真集まで、さまざまな印刷本と、トートバックやTシャツなんかのグッズですよ。だから、コミケのエロより、アートの方が100年遅れていると言うことですね。

 

都築: 

みんな紙が好きなんですよ(笑)。
 

河西: 

それは分かるよ、すごく分かる(笑)。でもそれってただの愛玩物だよね。ノスタルジーだし。言い方を変えるとフェティッシュですよね。それは写真における「フィルム」や「銀塩プリント」に対する思いと同じだと思いますけど、やっぱり一種のフェティシズムがお金を産んでいくんだよね。それが悪いんじゃないですよ、でもそういう事を分かってからやって欲しい。
 

都築: 

わかります。何だかボロボロと落ちました(笑)。
 

河西: 

分かってやらないと、そっちの方が偉いと思ってしまうからね。
 

都築: 

ありがとうございました。
 

河西: 

ギャラリーの方にこんな話をするのもアレですけど(笑)。
 

都築: 

見事なご回答でした。ご教授いただきまして本当にありがとうございました。
 

河西: 

大きな場ではなく、こういった機会だからこそ話しました。これを見ている人の中でも、これからデビューをされる方や、何か始めたいけど壁を感じている方も多いと思うんですよ。そういう人に、昔より今の方が全然良いんだということを伝えたいですね。だって、今ならタダで自分から発信できるでしょ。こんな事せいぜいここ10年くらいだからね。自分で写真集を作るのだって簡単じゃないですか。東京にいる必要すらないですよね。

少し前だと、展覧会を開催するとなったら、まずは東京にきて、バイトで貯めたお金で貸画廊を1週間借りて、でも誰も来ないみたいなさ、そういうことを繰り返してきたでしょ。本を作るのも、まずは編集者の方と仲良くなってだし、どんなに偉そうなことを言っても出版社がOKを出さないと本は出せなかったからね。本を作れても、本屋さんに置いてもらえなかった。でも今は、ネット通販で自分で売れるじゃないですか。だから、今難しい立場にいる人たちもいると思うけど、昔に比べたらめっちゃ楽だし、可能性があるよってことを分かってもらえたらと切に思います。

 

都築: 

ありがとうございました。
 

牧野: 

ありがとうございました。
 

河西: 

とんでもないです。別に、牧野さんのことを悪く言ってるんじゃないのよ(笑)。
 

都築: 

いやいや、全然そういう風には感じていないです。
 

牧野: 

私は、牧野さんの作品を前のシリーズから今回の作品まで見ていて、カオスの中に面白さがあって、何かもっと見ていたくなるような魅力があるなとしか見ていなかったですけど、都築さんのお話を聞いてハッとさせられました。
 

河西: 

やっぱり蒲田のカオスと、おばちゃんのカオスは似てるんだよ。
 

都築: 

ありがたいお言葉ありがとうございます(笑)。
 

牧野: 

ありがとうございました。それでは、この辺でトークを終わらせていただきます。都築さん、牧野さん、本日はありがとうございました。
 

河西: 

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*12  David Hockney A Bigger Book(TASCHEN)
https://www.taschen.com/pages/en/catalogue/art/all/02641/facts.david_hockney_a_bigger_book.htm?gclid=Cj0KCQjwxJqHfMgf_nlbMa9xfruqVYg7UHUsVaon34aAnQcEALw_wcB

脚注

文・編集・ウェブアーカイブ/小林萌子 (KANA KAWANISHI ART OFFICE LLC.)

校正・文責/河西香奈 (KANA KAWANISHI ART OFFICE LLC.)

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