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井村一登、出垣内 愛 二人展
『battery』
■会期
2026年5月16日(土)〜 2026年6月20日(土)
※5/16はオープニングレセプションを行いません
水曜日〜土曜日 13:00〜18:00
※17:45迄の最終入場にご協力ください
(日・月・火・祝 休廊)
■会場
KANA KAWANISHI GALLERY
〒135-0021 東京都江東区白河4-7-6
※ギャラリー前に車をお停めいただけます
■主催
カナカワニシアートオフィス合同会社
▼トークイベント
2026年6月13日(土)14:00〜15:30頃
(イベント終了後、17:00頃までレセプション)
入場無料/ご予約不要(先着20名程度着席)
※満席の場合は、立見や入場制限となる場合がありますので、ご了承ください
※登壇者は決定次第、情報掲載いたします

2025 | glass, aluminum | 62 × 148 × 159 mm | © Kazuto Imura, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY

2025 | glass, aluminum | 62 × 148 × 159 mm | © Kazuto Imura, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY
a solid fountain
2025 | glass, aluminum
62 × 148 × 159 mm
© Kazuto Imura, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY

2026 | dose-packaging paper, obsidian, 50-year-old window glass, human hair ash, chicken bones, pork rib bone ash, eggshell ash, shell ash | 340 × 75 mm | © Ai Degaito, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY

2026 | dose-packaging paper, obsidian, 50-year-old window glass, human hair ash, chicken bones, pork rib bone ash, eggshell ash, shell ash | 340 × 75 mm | © Ai Degaito, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY
Legacy System (detail)
2026 | dose-packaging paper, obsidian, 50-year-old window glass,
human hair ash, chicken bones, pork rib bone ash, eggshell ash, shell ash | 340 × 75 mm
© Ai Degaito, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY
KANA KAWANISHI GALLERYは、2026年5月16日(土)より井村一登(いむら・かずと)、出垣内 愛(でがいと・あい)による二人展『battery』を開催いたします。
井村一登の制作は、鏡の構造を解体し、再構築するプロセスから始まりました。紀元前620年の黒曜石の鏡から、現代のガラスに金属を圧着する蒸着技術に至るまで、彼は鏡の歴史と素材・技法研究を網羅的に探求しています。彼が鏡に感じているのは、ただの装置ではなく、人間とともに歩いてきた知性です。構造学や素材・技法、鏡の歴史を紐解く彼は、すべての鏡の代弁者になっていると言えるでしょう。
出垣内は、幼少期から陶磁器と釉薬に親しみ、大学では材料熱化学・応用化学・陶磁器を専攻。卒業後は信楽や沖縄などの陶磁器生産地で技術を磨いてきました。一度炎を受け加熱された陶器は大地に還ることができず、山のように積み上げられて廃棄されてしまう「土に還らぬ永遠」の現場を目の当たりにし、陶芸表現における持続可能性を探求。素材選定や釉化過程のなかで「他者とのコミュニケーション」や「素材の記憶」を釉薬に定着・表象させる独自の表現を追求しています。
本展はすべて新作を発表すると共に、「井村が出垣内を、出垣内が井村をキュレーションする」という相互参照の構造を軸に構成されます。井村が追求し続ける鏡をメタ的に捉えたこの構造により、互いの本質を響き合わせ「マテリアルに作用されること」で作品が完成する両アーティストによる、新たな表現の化学反応が生まれます。
井村の新作《a solid fountain》は、工場で鏡になることができなかった廃棄のガラス塊を用いる従来の〈mirror in the rough〉シリーズに、近年制作しているナルキッソスの神話的イメージを加えて新たに制作したものです。ガラス塊を、出垣内が窯で熱処理を加えてガラス全体を緩やかに軟化させ、元の形状と特徴を留めながら、傷や汚れを消す。さらに研磨と鏡面塗装を加えることで、ついにガラスは鏡になります。
「この鏡は固体の泉。ナルキッソスのための水面として在る。鏡になれなかったガラスの救済と、ナルキッソスを水中に溺れさせない救済が、一つの構造の中に結ばれている。」
出垣内の新作《Legacy System》は、祖父が営んでいた医院に由来します。かつては院内処方していた診療所に残されていた分包機に、出垣内が焼成した多様な素材の破片を封入することで、それぞれの素材が袋ごとに保管され、開かれるのを待つかのような物語性を持ったインスタレーションとなります。
素材と制作行為に深く向き合ってきた二人が、互いにキュレーションし合うことで新たな力を引き出す本展を、ぜひお見逃しなくご高覧ください。
![]() 《星の遺物》2025 | grass ash (houttuynia cordata and others), bone ash, tobacco, Fukushima feldspar, copper, chromium, zinc oxide, manganese dioxide | 80×120×125 mm | © Ai Degaito, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY | ![]() 《鏡》2024 | shelf board (carborundum), weeds, copper, soda bottle, studio debris 10×250×250 mm | © Ai Degaito, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY |
|---|---|
![]() 《Legacy System》2026 | dose-packaging paper, obsidian, 50-year-old window glass, human hair ash, chicken bones, pork rib bone ash, eggshell ash, shell ash 340 × 75 mm | © Ai Degaito, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY |
アーティストステートメント
出垣内から井村へ
2024年に井村の作品を知る。《wall-ordered》から井村自身の「見る/見られる」の交差に視覚への鋭い関心を読み取り、またナルシシズムというテーマを合わせ鏡の構造から作ることに、根底にある井村自身のコンプレックスを感じとる。
同年2024年の個展《ナルキッソスが死なないための10の方法》では、隠喩的モチーフに代わり、彼のセルフポートレート(アーカイブは非公開)つまり、作家自身を主題に据えていた。それが美術と呼べるかどうかより先に、自己と向き合う勇気を見た。
同時に過去の作品も私にとっては、井村本人が抱いていたコンプレックスなどの感情を個展同様、雄弁に語っていたように思えていたが、井村自身が直接的な表現や言語化しなければ伝わらないのだろうという苦しさも見え、同じ作家として深く共感した。
一方、《ナルキッソスが死なないための10の方法》以降、彼の言動からコンプレックスが薄れ、2026 年の《bulbocodium》では鏡のマテリアルをほとんど用いず、自己ではなく他者へと向かう制作姿勢を感じさせた。井村自身が鏡の役割を担いはじめたように見える。
本作は、井村が自身の救済に作っていた過去作品を変容させ他者の救済を試みる。
この文章が作品を鑑賞するガイドになれば幸いだ。
出垣内 愛
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井村から出垣内へ
身の回りにある素材を自ら調合し、熱を制御することで生み出された出垣内愛の釉薬は、既製のそれとは異なり、厳密な手順の洗練、フォーマットに収まらない、独自の何かとして存在している。その制作は率直でありながら、社会の問題と静かに呼応している。
存在の痕跡を残すか、残さないか——その行く末の選択肢を、釉薬となったそれに与えること。土は急速に失われつつある。彼女は今、持続可能な素材で製作された棚板や、土壁から採取した土をバクテリアと混ぜて粘土化したものを支持体として作品を制作している。
彼女の作品が示すのは、土とは異なり、釉薬は溶け、流れ、再び別のものへと変わることができるということだ。地球がこの状態を保つ限り、あらゆる釉薬に宿った思念は存在し続け、人が望む限り何度でも形を変えることができる。それは、残すだけでなく、変化の選択肢をともに手渡すことができる。
他者へと受け渡されることで、 変わり続ける可能性を持ちながら、在り続ける。
井村 一登
アーティストプロフィール
井村 一登(いむら・かずと)
1990年京都市生まれ。2015年京都市立芸術大学総合芸術学科卒業。2017年東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修了。
自身の内面は自身のみが知り、自身の外見は他者にしか見えない。鏡像や写真は外見の再現 (re-presentation) の像であり、それ自体ではない。つまり内面、外見を双方向から知る存在がいないことに興味を持ち、自身を内包させた鏡を他者に見せることをテーマに制作を行う。それは光学機器や映らない鏡、魔鏡、黒曜石、回転液体鏡など、素材や技法を横断し、現代の科学・工業史から神話や祭祀まで、人と鏡の関係性の変遷を追う。
近年の主な個展に「commission work」(2024年、Kanda & Oliveira、千葉)、「ナルキッソスが死なないための10の方法」(2024年、Studio Ghost、東京)、「折衷案がもたらすNレンマ」(2024年、KANA KAWANISHI GALLERY、東京)など。
グループ展に「底に触れる 現代美術 in 瀬戸」(2024年、国際芸術祭「あいち」地域展開事業、愛知)、「マツモト建築芸術祭」(2023年・2022年、長野)、「青山行不尽3:唐詩の道中日芸術家作品特別展」(2022年、浙江展覧館、中国・浙江省)、「Sense Island –感覚の島– 暗闇の美術島 2021」(2021年、猿島、神奈川)など。
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出垣内 愛(でがいと・あい)
奈良県明日香村出身。大学や各地の窯業施設で陶磁器・材料熱化学を学ぶ。存在の痕跡を「残す」、「残さない」という選択肢を、ものに与えることをテーマに植物や骨、生活廃棄物や遺品など人と距離感にあった素材を燃やし、その灰のみで釉薬を精製。「土に還らない永遠の恐ろしさ」と「記憶装置としての尊さ」、その相反する感覚を抱えながら、個人の記憶を変形しながら永年を刻む「アーカイブ」を追求している。
近年の主な個展に「誠実な記憶、釉薬」(2025年、Suzusan Galerie Raum、愛知)、「And you」(2024年、JITSUZAISEI、大阪)、「聲」(2023年、JUU arts & stay by FIGYA、大阪)など。
グループ展に「BankART アライブ!展 推薦枠」(2025年、BankART Station、神奈川)など。
三菱地所が所有するビルのコミッションワークも手がける。
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