鈴木麻弓 個展『The Tide’s Gift』
■会 期
2025年8月23日(土)~ 2025年9月22日(月)
水曜日〜土曜日 13:00〜18:00 (日・月・火・祝休廊)
※臨時開廊:9/21(日) 9/22(月)13:00-18:00オープン
やむを得ない事情により、会期を9月27日から22日に変更させていただきましたことを深くお詫び申し上げます。作家をはじめ遠方やお忙しい合間を縫ってご来廊予定の皆様に真摯に深くお詫び申し上げます。
少しでも多くの方にお運び頂きたく、【9/21(日)および9/22(月)は臨時オープン】とさせて頂きます。
■会 場
KANA KAWANISHI PHOTOGRAPHY
〒106-0031 東京都港区西麻布2-7-5 ハウス西麻布 5F
■主 催
カナカワニシアートオフィス合同会社
▼トークイベント①
日 時:
登壇者:
参 加:
2025年8月23日(土)17:00〜18:00
石井朋彦氏(写真家・映画プロデューサー) × 鈴木麻弓(写真家)
入場無料/予約不要(先着15名着席)
▼トークイベント②
日 時:
登壇者:
参 加:
2025年9月12日(金)18:00〜19:30(トーク19:00頃迄、その後懇親会)
石田哲朗氏(東京都写真美術館 学芸員) × 鈴木麻弓(写真家)
入場無料/予約不要(先着15名着席)

2025 | archival pigment print | © Mayumi Suzuki, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY

2025 | archival pigment print | © Mayumi Suzuki, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY
From the series, The Tide’s Gift
2025 | archival pigment print | © Mayumi Suzuki, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY
KANA KAWANISHI PHOTOGRAPHYは、2025年8月23日(土)より鈴木麻弓個展『The Tide’s Gift』を開催いたします。
宮城県女川町で代々営まれる写真館の3代目として生まれた鈴木麻弓は、写真と深い関わりを持ちながら育ち、写真が紡ぎ出す物語をとおし、表現による解放を信念に感じさせる作品を発表してきました。デビュー作である前作〈The Restoration Will〉は、東日本大震災で自身と家族に起こったできごとを静謐に受け止めながら前をみつめる姿に、強く心を揺さぶられる作品であり、二作目となる〈豊穣(HOJO)〉では、自身の高度不妊治療(IVF)の継続を断念する体験を基軸とする物語を紡ぎ、いずれのシリーズでもアルル国際写真祭に招聘されるなど、国内外での評価を高めている写真家です。
8年前から構想してきた三作目となる意欲作〈The Tide’s Gift〉は、シリーズ初期段階であることを自覚しながらも各段階で発表していくことを決意した壮大なシリーズであり、津波でいちど全てが一掃されてしまった鈴木の故郷の女川の街を、写真をつかって編み上げてゆく作品です。
故郷とは、誰もが抱いているはずのもので、世界中のどこにでもあるはずのもの。写真にしかなし得ない記録性の強さを見事に活かしながら、「いま」を大きく流れの真ん中に据えて、しかしそこに共に存在するいろいろな視点の過去を積層させることで、個人史を通し、様々な文化圏の老若男女すべての人々にも関わり得る物語となることでしょう。
本作は2024年度「T3 New Talent」ファイナリスト作品にも選出され、秋に開催されるT3フォトフェスティバル東京での作品展示と共に、海外巡回展も予定されています。各々が立っているその場所が、たくさんの人々の過去の記憶の上に成り立つことに想いを馳せさせ、いまいちど誠実に命を全うしていくことを喚起させられる作品の最新形に、是非ご期待ください。
![]() From the series, “The Tide’s Gift”2025 | archival pigment print | © Mayumi Suzuki, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY | ![]() From the series, “The Tide’s Gift”2025 | archival pigment print | © Mayumi Suzuki, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY |
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![]() From the series, “The Tide’s Gift”2025 | archival pigment print | © Mayumi Suzuki, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY | ![]() From the series, “The Tide’s Gift”2025 | archival pigment print | © Mayumi Suzuki, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY |
アーティストステートメント
「私にとって『故郷』とは何か?」
大津波が故郷を呑み込んだ2011年以降、この問いが私の中に浮かび上がりました。私は写真館の三代目として、女川の移り変わる風景を上空から眺め、過去の記憶と重ね合わせてきました。1933年の昭和三陸津波、1960年のチリ津波、そして2011年の東日本大震災――世代を超えて津波に立ち向かい、復興を遂げてきた住民たちの記憶がそこにあります。再建されつつある家々、かつての女川湾、仮設住宅の前で撮られた家族写真、祖父が撮影した婚礼写真――これらはすべて私の中で故郷を形作る断片です。
復興計画は2011年以降の8年間を費やして進められました。その間、私は町と人々を記録し続けてきました。前作「The Restoration Will」では、私個人の家族に焦点を当てたプロジェクトでしたが、今回は視点を広げ、町全体へと目を向けています。町に残る古い地図や建物のアーカイブ、写真館で撮影されたポートレート、そしてドローンを使った空撮による俯瞰的な視点を通して、町の変化とその背景を記録してきました。また、女川の海水を用いたソルトプリントでは、町と海のつながりを写真という形で表現しました。これらの手法を組み合わせることで、私は町の記憶を多角的に捉え、見つめています。
新しい家に佇む人々、津波で損傷したスナップ写真、先祖の写真を手に取る瞬間、過去と現在が交錯し、祖父や父が見つめてきた町の視点を感じます。それは同時に、私が語らずにはいられない町の物語でもあります。復興が進む中で、人々がどのように未来を考え、家族のあり方を模索し、この町に住み続ける理由を探してきたのか。その過程を記録することで、不安と希望が交錯する町の物語を、写真を通して静かに未来へと紡いでいくことを願っています。
鈴木麻弓
アーティストプロフィール
鈴木麻弓 (すずき・まゆみ)
1977年、宮城県女川町生まれ。現在は東京都在住。卒業後フリーランスとして、ポートレートを中心に活動。2011年東日本大震災にて、故郷である女川町の7割が壊滅、両親が行方不明となる。以降、故郷へ足しげく通い、地域の人々の前に進む姿を記録し続けている。現在、日本大学芸術学部写真学科准教授。
主な個展に『豊穣』(2023年、KANA KAWANISHI PHOTOGRAPHY、東京)、『The Restoration Will/The Place to belong』(2018年、Galeria Miejska Arsenał、ポズナン・ポーランド)、『The Restoration Will』(2018年、SPAZIO LABO、ボローニャ・イタリア)、『The Restoration Will』(2017年、Reminders Photography Stronghold、東京)など。
主なグループ展に第55回アルル国際写真フェスティバル「Reflection – 11/03/11 Japanese Photographers Facing the Cataclysm」 および「TRANSCENDENCE」(ともに2024年、アルル・フランス)、京都国際写真祭 『10/10 現代日本女性写真家たちの祝祭』(2022年、HOSOO GALLERY、京都)、『Biennale de Photographie en Condroz』(2021年、ベルギー)、『あしたのひかり 日本の新進作家 vol.17』(2020年、東京都写真美術館、東京)など。
主な受賞歴にT3 Next Talent ファイナリスト(2025年、日本)、PHotoESPAÑA 2018 Best Photography Book of the Year(2018年、スペイン)、Photobooxグランプリ受賞(2017年、イタリア)他多数。
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