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マイヤ・タンミ個展
『白兎熱 / White Rabbit Fever』
オープニング・レセプション
8月4日(金)18:00 - 19:15
※アーティスト本人も来日致します
■会 場
KANA KAWANISHI PHOTOGRAPHY
〒106-0047 東京都港区南麻布2-8-17 THE TUB
TEL 03-5843-9128
■会 期
2017年 8月 4日(金)~ 9月 22日(金)9月24日(日)
12:00-19:00 | 日〜木・祝祭日休廊
*助成:Frame Finland
Day 1from the series "White Rabbit Fever," archival pigment print © Maija Tammi, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY | Day 17from the series "White Rabbit Fever," archival pigment print © Maija Tammi, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY |
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Day 100from the series "White Rabbit Fever," archival pigment print © Maija Tammi, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY |
KANA KAWANISHI PHOTOGRAPHY は、2017年8月4日(金曜日)より、マイヤ・タンミ個展『白兎熱 / White Rabbit Fever 』を開催いたします。本展は、Bromide Publishing House Ltd. から新たに刊行された写真集 『White Rabbit Fever』(ハードカバー/200P/日英バイリンガル)の刊行記念展覧会となります。
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マイヤ・タンミは、1985年ヘルシンキ生まれ。ヘルシンキ・アールト大学博士課程にて研究を進めながら、科学者や音楽家とコラボレーションを頻繁に行い、生と死、嫌悪感と愛好、美しさについて、時間について、倫理観についてなどのテーマを題材に、写真表現を用い世界各国で精力的に展示を行なっているアーティストです。
《White Rabbit Fever》のシリーズでは、息絶えた兎を徐々に自然へと還っていく様子を森の中で100日間連続撮影することで、生と死について、美しさと嫌悪感について、またそれらの境界線の曖昧さについて、鑑賞者へと問いかけます。
「美しさを定義するものはなんだろう?
なぜすべての生き物を美しいと感じないのだろう?」
美しさについての考察を重ねるタンミは、醜いものとして捉えられがちな「死」の概念を、兎の細胞の一つ一つがすべて自然へと還っていく様子をありのままに記録することで、おとぎ話のような神秘的な美しさを携えた場面として提示しています。同時に、
「どの瞬間から兎でなくなっているのだろう?」
「兎はいつまで存在をしているのだろう?」
といった、根源的な生命の神秘についても鑑賞者に問いかけます。
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兎のシリーズと並行しタンミが撮影しているのは、無限増殖をつづけるヒト由来の細胞株。亡くなった患者から生前に摘出されたこれらのがん細胞は、世界中の研究所で培養され生き続けています。
ヒト細胞は、一定回数分裂をすると寿命を迎えますが、ヒト細胞が変異したがん細胞は、十分な場所と栄養が確保されることで永遠に分裂を繰り返すことができます(*)。例えばアメリカ人女性のヘンリエッタ・ラックスは、彼女自身は1951年に亡くなったものの、いま現在もその細胞は生き続け、増え続けています。HeLa(ヒーラ)細胞と名付けられたこの細胞は、初めて宇宙空間に到達したヒト細胞となりました。タンミはこのヒーラ細胞の他に、1983年にフィンランドで亡くなった10代の患者から摘出されたPa-Ju(パジュ)細胞や、2009年にフィンランドで亡くなった患者に由来するUs-Ki(ウスキー)細胞を、ヘルシンキの研究機関と協働にて培養しながら、経過観察を行ない撮影しています。
*ヒト細胞は、分裂を繰り返すごとにある特定部位(テロメアDNA)が少しずつ短くなり、40〜60回の分裂を繰り返すことで限界を迎えて寿命となりますが、がん細胞として変異したヒト細胞は、通常は発現しない酵素(テロメラーゼ)が働いてその部分が修復されてまた伸びるため、無限に分裂を繰り返すことのできる不死化(無限分裂能)株となります。
Day 11805, Pa-Jufrom the series "White Rabbit Fever," archival pigment print on backlit film © Maija Tammi, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY | Day 11924, Pa-Jufrom the series "White Rabbit Fever," archival pigment print on backlit film © Maija Tammi, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY |
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Installation box: oak, LED lights, operated with 6xAA batteries, 12 × 12 × 12 cm © Maija Tammi, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY |
「死がないとしたら、時間はどのように感じられるだろう?」
このようなハッとさせられるような問いと共に、抽象的で捉え難い「時間」の概念の考察へと鑑賞者を誘うと共に、生死の曖昧な境界線についても言及しています。一般的に死としてイメージされる心肺停止状態は「臨床死」に区分されますが、その臨床死の状態が6分程度つづくことで不可逆的に命を失った状態とされる「生物学的死」を迎え、さらに臨床死や生物学的死を迎えたあともヒトの幹細胞は約17日間体内に生き続けるといった研究報告もあり、タンミは、生死の境界線は科学的にも実は曖昧なものであることを露わにします。
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生命、時間、倫理などの問題を好奇心のままに、科学的なリサーチやフィールドワークを通してそれらの境界線の曖昧さを提示しながら、生命の神秘に迫るマイヤ・タンミ。アムステルダム(オランダ)、ヘルシンキ(フィンランド)、ローマ(イタリア)、トゥルク(フィンランド)と欧米各地で開催された本展『白兎熱 / White Rabbit Fever』は、初の書籍刊行記念展覧会として、また初めて日本で開催されるマイヤ・タンミの個展となります。
是非この度の貴重な機会をお見逃しなきようお運びいただけますと幸甚に存じます。ご期待ください。
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